ここ数年、使い方に柔軟性を持たせた不動産の活用方法に対する関心が高まっていますが、2018 年には特に大きな変化が見られました。CBRE の調査によると、昨年、フレキシブルに使われる不動産の合計面積が、NY のマンハッタン単独で 2017 年の 940 万平方フィートから 1,350 万平方フィートに急増したのです。
とりわけ、そのような柔軟な不動産活用を始めたエンタープライズ(企業)の存在が目立っています。その理由は何でしょうか?企業はこれまで何十年もの間、ビジネスの変動に迅速に適応するため、製造・研究・流通部門と同じように、不動産コストも変動させられるような方法を模索してきました。それは理にかなう考え方だと言えます。ワークスペースを柔軟に使うと、不動産を固定資産としてではなく、アジャイルに活用できるからです。不動産をアジャイルに活用するということは、スペースに対する初期投資だけでなく、ビジネスのニーズに合わせてスペースを拡張・収縮することを自由に選べる、ということです。
ここで、従来型のリースかアジャイルなスペース活用のどちらかを企業が選ぶ際に、どのような財務的な決断をする必要があるのかについて詳しく見ていきましょう。
アジャイルな不動産活用法 1.0:伝統を見直す
従来型のリースよりも、柔軟なワークスペースの活用の方が理にかなうのは、どんな時でしょう?企業での意思決定者の大半は、不動産を設備投資の観点から考えています。
濃いグリーンの線は、従来型のリースの経過年数に伴うコストを表しています。建物の改修や設置に前払いのコストがかかり、初期投資が割高になります。そして時間の経過と共にコストが分散するので、より契約期間の長い、伝統的なリースを選ぶことになるという訳です。
薄いグリーンの線は、建設費や運営費が全体的なコストに含まれる、柔軟性の高いリースでの年間コストを表しています。契約当初から比較的平坦なままであることがおわかりでしょう。契約から 4 年目頃にこの 2 本の線が交わり、そこから先はフレキシブルなスペースの方が高額になっています。
先行きが見えない中でのチャレンジ
このモデルの問題点は、今後のビジネス展開の流れを予測でき、従業員数が一定であることを前提としています。
これはもちろん、現実的な考え方ではありません。この点に関し CBRE のクライアントは、ビジネスの全体的な見通しに自信があったとしても、市場や業界のボラティリティや不測の要因、またはテクノロジーがビジネスに与える影響などに応じ 10 – 25% 程度の見込み違いが生じる可能性を指摘しています。
これに加え、実社会での不確実性やリスクを加味すれば、さらに予測がつかないものになることは明らかでしょう。
アジャイルな不動産活用法 1.0:柔軟性の真の価値
次に、この財務モデルに実社会を当てはめ、企業が時間の経過と共に遭遇するリスクも取り入れてみましょう。
このモデルでは、100 人の従業員が固定のレートで現状維持または増加すると仮定するのではなく、かなり現実に近いものになっています。実際には、5 年間で従業員数は 150 人に増加、または 70 人に減少する可能性があります。
ここではこのモデルをアジャイル 2.0 と呼びます。不確実性を加味することで、従来型でのコストと、柔軟性を持たせたスペースのコストをそれぞれ示す 2 本の線が、実際には交わらないことがわかるでしょう。
私たちは、柔軟性の価値は、柔軟なリースのコストよりも大きい ということを突き止めました。現在、所有不動産をタイミングよく敏捷に活用したいと考える企業が増え続けています。これは短期的な固定ソリューションではなく、長期的なビジネスの現実を反映したものです。
従来型とフレキシブルな条件の比較
ここで例として、従来型と柔軟性のあるオプションとでは実際にどのような違いが生まれてくるのかを見てみることにしましょう:
- 最適化されない従来型: 従来型では、このビルの平均空室率は 18 %です。黄色い部分を見てみましょう(このシナリオでは、賃貸中のビルには屋上階があり、濃い緑色の部分がそれを指しています)。青い縞状の三角部分は、スペースを返還・収縮する可能性を指し、また黄色い縞状の三角部分は、拡大する機会を表します。
- 最適化された従来型: このモデルでは、スペースの柔軟性が向上しています。ここでは占用するスペースがやや少なくなり、拡張オプションが増えています。これにより、平均空室率は 7 %に下がり、正味現在価値(NPV)の平均は 11 %低くなります。このシナリオでは、ビジネスが予想よりも速く成長すると、多少の損失が生じてしまうことになります。(もっとも、目覚ましい成長スピードとは嬉しい悩みですが。)でも、成長のスピードがゆるやか場合は、損失を被るリスクが軽減されることになります。つまり、柔軟性を加えることでより多くの価値がもたらされるということです。
- 最適化されたハイブリッド型:ではここで、最適化されたハイブリッドなリースの場合について見てみましょう。下の階にある緑色と黄緑色の部分は、エンタープライズ向けまたは従来型のコミュニティ型ワークスペースを指します。ビジネスが成長した場合、これらのスペースに拡張することはできますが、現時点では他のコワーキングのテナントが入居しています。このリースでは、空室率はたったの 2 %にまで減り、平均コストも 14 %下がるという計算になります。そして、成長のスピードが遅くても速くても、他のリースに比べてコストは低い、ということがわかるでしょう。
アジャイルな不動産活用の未来
不動産はかつてのように固定資産ではなくなりました。より多くの企業が時宜にかなった不動産の活用方法を採用したいと考えており、この傾向は今後も続くでしょう。敏捷性を持たせた不動産の経済的リターンについて裏付けることはすでに実証されています。
もしビジネスの立ち上げを検討中なのであれば、フレキシブルにスペースを活用することでどんなメリットがあるのか、ぜひ考えてみましょう。将来のポテンシャルについて計算してみることで、不動産をフレキシブルに活用することが今現在も、そして将来に渡り最も多くの利益を産むことがわかります。
アジャイルな不動産活用方法の詳細については、CBRE と WeWork のオンラインセミナー 「Agility without compromise: secrets of agile real estate(妥協なきアジリティとは:アジャイル不動産の秘密)」をご覧ください。
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本記事は Beth Moore(WeWork アメリカ、カナダ、イスラエルブローカー開発主任)、Brandon Forde(CBRE アドバイサリー及び取引サービス部門エグゼクティブマネージングディレクター)Christelle Bron(CBRE アドバイサリー及び取引サービス部門シニアマネージングディレクター)が執筆しました(敬称略)。