よく考え抜かれたスペースは、エンゲージメントを生み、イノベーションを推進し、生産性を高めるための強力なツールです。でも、最適化されたスペースとは一体どんな場所なのでしょうか? スペースの科学 では、意図的なデザインにより「ただ働くための場所」が「包括的なエクスペリエンス」に変わるその仕組みに迫ります。
競合他社に先駆けてイノベーションを行おうと、企業は強いプレッシャーを感じています。二歩(あるいは十歩)先を行く能力のある企業に最大の利益がもたらされるからです。
イノベーションへの道は、わかりやすいものです。まず、最高の人材を採用することから始まります。革新的なソリューションを考え出せる人材を採用し、彼らの考えを実行に移し、学ぶ。その繰り返しです。しかし、今日の世界では、そこで終わりません。
優秀な人材を採用しておいて、そこそこのオフィス環境しか与えず、最高の仕事をするように期待することは、災難といってもいいでしょう。あなた自身、革新的なスーパーハブというよりも、映画『リストラ・マン(原題:Offce Space)』を再現したようなオフィス環境に身を置いたことはありますか?(あるいは、その真っただ中にいますか?)
世界で最も革新的な企業は、ビジネスのあらゆる側面を最適化させます。もちろん物理的なワークスペースも、です。
クリエイティブに発想し、あらゆる可能性を思い描き、点と点をつないでビジネスを未来につなげる能力があっても、窓がなく、自然光の入らないオフィスで一日を過ごせば、すべてが不可能に感じられます。鎖でデスクにつながれていると感じるときも、そうです。気が塞ぐような雰囲気のワークスペースでは、優秀な人材でさえ、壮大なアイデアを思いつくことは難しいでしょう。
では、雇用主はどうしたらワークスペースにイノベーションの舞台を用意できるでしょうか?WeWork ではオフィス環境戦略チームが多くの時間を費やして、誰もがベストパフォーマンスを発揮できるような職場体験の最適化について考えました。チームにイノベーションをもたらせるように、ワークスペースを再考してみませんか?以下に 3 つの例をご紹介します。
1. 「ハッキングできる」ワークスペース
チームがイノベーションに取り組む際、素早くアイデアを思いつき、プロトタイプを作成し、テストすることが求められます。そうだとすれば、ワークスペースも同じようにアジャイルであるべきではないでしょうか?言ってみれば、チームメンバーには、従来のオフィス環境を物理的に「ハッキング(精巧に改良する)」する権限が与えられてもいいのではないでしょうか?
それは一体、どういう意味でしょう?デスクから椅子、ソファからテーブルまで、従業員は雇用主が当初想定していたものではなく、自分たちのニーズに合わせてワークスペースを改良できるべきだ、ということです。例えば WeWork では、ハンドルやその他の視覚的な仕掛けを追加することで、家具を動かせるようになっています。チームメンバーは、大人数のブレインストーミングでも、1 人で静かに仕事をする場合でも、ニーズに合わせてスペースの構成を変更できます。要するに、ワークスペースとは静的で変化しない「ハードウェア」ではなく、「ソフトウェア」またはオンデマンドで機能を更新できるものだと WeWork は考えています。チームメンバーは、居心地のよい住まいにいるような、インスピレーションを感じる環境を率先してつくれるように奨励されるべきです。
素晴らしい例をご紹介しましょう。カリフォルニア州パロアルトに設立された、国際的なデザイン兼コンサルティング会社の IDEO を訪問したときのことです。彼らの哲学は、「ハッキング可能な」ワークスペースでは、勢いのある実験的な仕事が生まれる、というものでした。それを検証するために、あるスペースに壁があると人間はどのように感じるか、という実験をしました。段ボールの壁を設置し、さまざまな配置に変えてテストし、そのスペース内での行動の変化を観察したのです。
こうした「スペースハッキング」の実験結果はというと、皆が熱心にアイデアを共有し、積極的に問題解決に取り組むワークスペースができあがりました。さらに、ハッキング可能なスペースで働く従業員は、「罰を受けずに」、自由に自分のアイデアや意見を述べるようになります。ということは、彼らはそのスペース内では、自分を表現することに対し心理的に安全だと感じているのです。
職場で安心感を得ることは、どのくらい重要でしょうか?秀でたチームのダイナミクスについて調査した研究によると、Google の人事部門は「安心感」を必須要素 5 つのうち最初にくるものだと特定しました。新しいことに挑戦する際の恐れがなくなると、従業員は自らリスクを負うようになり、ざっくばらんな議論が行え、創造的なソリューションをブレインストーミングできるようになります。そうなると、失敗は学びの経験となり、問題に直面しても前向きな結果につながります。こうしたことはすべて、最適なワークスペースによって育まれ、促進することができます。
2. 独自の文化をつくりだす儀式
どんな企業にも、習慣ともいえる「儀式」があります。それは、毎日欠かさないルーティン(コーヒーブレイクやティータイム)から、時々訪れる年次総会や退職記念パーティーのような大がかなりなイベントまで、さまざまです。こうした行いを通じて、私たちは同じ職場で働く人や、働く場所とのつながりを深めます。ところが、ワークスペースでの「儀式」は、従業員がイノベーションを生む力にも影響を与えることをご存知でしたか?
職場で何らかの活動を始めるように権限を与えられた従業員は、チームへの帰属意識を強める傾向があります。すなわち、「儀式」が 人と人との間 に 共通したアイデンティティ を生み出すと言えます。例えば成功したスポーツコーチの多くは、何らかの儀式を通じて、チームメンバーに絆をもたらしています。
単なる習慣と、イノベーションを生み出すように設計された「儀式」には、大きな違いがあります。WeWork では、毎日新鮮なコーヒーを提供するだけではありません。私たちがコーヒーを用意するのは、「重力の中心」となるように設計されたキッチンです。そこは求心力があります。人々が自然に集まって話をし、アイデアを共有したくなるような場所なのです。レセプションエリアも、単なる受付とは違います。コミュニティチームが一丸となって、きめ細かいサービスを心掛け、それをメンバーたちにも感じてもらおうとしています。毎週月曜日に提供されるチームディナーも、単なる食事以上のものです。週末明けに皆で集まって、その週の予定について話し合う時間です。これらの儀式を通じて、チームメンバーはコミュニティの一員であると感じることができます。それはイノベーションに必須の「安心感をもつこと」に通じます。
このように、ワークスペースの設計によって儀式を作り出すことができますが、日常の業務を真に強化するのは、儀式によって強められた一体感や共有されるポジティブな想いです。毎日繰り返される儀式は、メンバーの感情によい刺激を与え、不安を軽減すると共に、帰属意識を高め、イノベーションにふさわしい環境を作り出します。
3. 遊びの要素を加える
私たちのすることに遊び心を取り入れることは、脳の柔軟性を高め、イノベーションを起こし創造的になるために不可欠です(これは年齢と共に劇的に減少します)。『Play:How It Shapes the Brain, Opening the Imagination, and Invigorates the Soul』の著者、スチュアート・ブラウン医学博士とクリストファー・ヴォーンによると、遊ぶことは本質的に、「それがしたいから」という理由だけで行う行為のことです。
遊びとは:
- 目的はない
- 自発的にやるもの
- それ自体が楽しい
- 時間を忘れさせてくれる
- 自意識が弱まる
- 臨機応変な潜在力を高める
- 「もっと」という気持ちが続く
遊ぶことで脳の神経栄養因子(神経成長)、扁桃体(感情処理)および背外側前頭前野(実行決定)が直接刺激を受けます。研究によると、ラットはおもちゃで遊んだり他のラットと交流したりしながら、さまざまな刺激を受けて脳をさらに発達させることがわかっています。
特筆すべき点として、イノベーションの指標は、子供の頃、楽しく遊んで満たされた記憶の中に見られ、これは子供の脳が発達するにつれて強まります。ですが、イノベーションを起こしたければ、遊びは子供の頃だけで終わってしまうべきではありません。もしワークスペースにもっと遊び心を取り入れれば、従業員たちは創造的な思考力を発揮し、革新的なアイデアにつなげるでしょう。
従業員たちに、時間制限なしでブレインストーミング をさせてみてください。(もしプロジェクトを一旦停止させたとしても、誰も罪悪感を感じることのない ようにしてください。)そして、午後の予定にもっと遊びの時間を組み込んでみてください。遊びの時間を推奨することで、あなたは従業員に対し、「クリエイティブであること、イノベーションを推進することは、彼ら自身にかかっている」ということ、そして雇用主としてのあなたの仕事は、イノベーションが起こる環境をつくること、だということをはっきりと示しています。
イノベーションの舞台を用意する
世界で最も革新的な企業は、ビジネスのあらゆる側面を最適化させます。もちろん物理的なワークスペースも、です。最高の人材を採用するだけでは不十分です。競争力のあるスピードでイノベーションを起こすには、最高の仕事ができるワークスペースを与えることが必要です。これにより、ビジネスを前進させる革新的なアイデアが生まれる舞台が整います。
WeWork では、あらゆる規模の企業や個人が直面するビジネス上の課題に対し、ソリューションを提供しています。
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