3 月上旬、ジャクリーン・スラトキーは上司からの電話で、ニューヨーク市内の WeWork スペースで、広まりつつある新型コロナウイルスへの対応を手伝ってもらえるかと尋ねられました。
「その時は、当社が予測不可能な世界規模の出来事の影響をここまで受け、私のプロジェクト管理スキルが真の意味で試されることになろうとは思ってもみませんでした」とスラトキーは言います。
その当時は、まだこれから起きることの重大さがわかっていませんでした。世界保健機関(WHO)は、3 月上旬に新型コロナウイルスの世界的な大流行を宣言し、全米の各州で緊急事態宣言が発生される間際でした。
スラトキーは、2018 年 10 月以来、米国とカナダの WeWork で「優れたオペレーション」を担当するシニアマネージャーとして「無理な働き方をやめ、賢く働こう」という姿勢を打ち出していました。しかし、ウイルスへの対応は次元が違いました。
「新型コロナウイルスの対策方法には前例がありませんでした。どれだけ Google で検索しても、必要な答えは得られなかったのです」と言います。
しかし、今、その状況は変わりました。WeWork のメンバーは、世界中で、消毒ステーションが完備され、業務上必要な距離 ( English )が確保され、マスクや手袋も十分に用意されている安全で生産性の高いワークスペース ( English )となった WeWork オフィスを利用しています。このワークスペースの再構築は、新型コロナウイルスの感染状況に関する最新情報に基づき、常に見直されています。WeWork ビルが営業を続けられるのも、先駆的な取り組みを行うチームのおかげだと言えます。ビルのオペレーションチームの使命は、WeWork のコミュニティ ( English )とオペレーションチームが比類なきメンバーエクスペリエンスを提供できるようにするため、世界最高水準のオペレーションエクセレンスを向上させ、提供することです。
米国とカナダのオペレーション担当ディレクター、アレシア・クラフトは、オフィスの再構築と復帰計画を主導しました。(クラフトは地域全体のプログラムのリーダーで、スラトキーはプログラムの中の特定の業務フローの責任者です。)「これが私たちのニューノーマルです。この状況下でも営業を続け、安全に感じてもらう方法を見つける必要がありました」と、2019 年 7 月に入社したクラフトは述べます。
「私たちは、コミュニティや人脈作りにおける WeWork の強みを維持しながら、業務上必要な距離、公衆衛生や個人の幸せを求めるメンバーの期待に応えることを約束します。」
再構築に取り掛かった当初の状況
この再構築は、一晩で完了したわけではありません。WeWork のロケーションは、北米だけでも 40 都市にわたり、世界全体では 800 以上もあります。ですから、全社規模で一貫した対策を講じることは非常に大がかりな作業となります。特に、ほぼ一晩で多くの業務がリモートに切り替わったことを考えると、なおさらでした。
前例のない道を切り拓くために、クラフトとスラトキーは実に基本的な問いかけから始めなければなりませんでした。「新型コロナウイルスの症例はどうやって報告されるのか。誰が何を、いつ知る必要があるのか。どうやってスペースを消毒するか。これらの決定事項の責任を負うのは誰か。
オペレーションチームと毎日打ち合わせを行うため、リアルタイムで更新を把握できるように Slack の内部チャネルを立ち上げました。
「この時は、会社とメンバーのために、誰もが自分の担当業務以外のことをしなければなりませんでした」とスラトキーは述べます。「新型コロナウイルス以前に私が考えていたのは、パントリーに置く非乳製品をどの種類にしようか、というようなことでした。今、最前線に立つ私にとって、WeWork スペースがメンバーにとって安全 ( English )であることを確認するのが一番重要な任務です。」
クラフトとスラトキーは、自分たちの責任を真剣に捉えていました。基本的な質問への答えが出たら、今度はワークスペースに適切なツールを用意する番です。クラフトは、これまでの WeWork ビルへの物品搬入の中で最大規模の搬入を指揮しました。内訳は、19,000 個の手指消毒液ディスペンサー、13,000 個の消毒シートディスペンサー、新しいシステムを説明する標識 ( English )、ソーシャルディスタンスを促すためのクッション、5,000 箱の手袋、何千枚ものマスクです。
クラフトは、プロジェクト管理サービス Monday.com を利用して、すべての活動を追跡しました。チームは、ビルごとの注文数、配達日、追跡番号、保険証書など、細心の注意を払って確認しなければなりませんでしたが、物流業者が素早く荷下ろしをできるように、配達の不備など、文書化や合理化が必要なものすべてを管理する必要がありました。
スラトキーは、「それは、私が最もやりがいを感じることです。私の仕事は、会社が最も必要とする時に考え抜いたリーダーシップと方向性を提供すること、そして現場が混乱してしまった時に業務やプロセスの優先順位付けを行うことです」と述べています。
こうしたことに対処しながら、クラフトとスラトキーはさらに、これから迎える「新しい仕事の世界」のための手順や決まりを開発する全社的な取り組みを率いていました。これらの手順や決まりは、現在すべての WeWork ロケーションで導入されています。たとえば、スペースの密度を下げる ( English )(共用エリアで家具を減らしたり配置間隔を広げたりなど)、手指消毒液や消毒シートをあらゆる場所に設置する、清掃と消毒 ( English )の頻度を上げる(特に人が集まりやすい場所)などです。コミュニティチームはマスクと手袋を着用し、定期的な体温検査も受けています。
オフィスへの復帰
すべての準備が整った時、クラフトとスラトキーはメンバーを再び WeWork スペースに迎え入れられることに大きな喜びを感じました。彼ら自身も、オフィスに戻れることに歓喜しました。
「オフィスに戻れるのは本当に最高の気分です。」7 月下旬に開催された、ワークプレイスの適応をテーマにしたウェビナーで、クラフトはこう語りました。彼女はシアトルの WeWork 1448 NW Market St からウェビナーに参加しました。そのロケーションは、彼女の自宅から徒歩 10 分のところにあります。「私はずっと 14 歳の双子の娘たちと家に籠りきりでした。今日は家を出られて嬉しいです」と彼女は言いました。
クラフトは、電話会議中に洗濯物をたたむなど、在宅勤務の良い点もあったけれども、職場で同僚たちと同じ空間にいるのとはまるで違うと言います。
「コラボレーションができないことは、非常に辛いことです。同じ空間に人がいて、誰かが隣にいて、思い立ったその瞬間にその場で会話をしたりブレインストーミングしたりすることに勝るものはありません」と、クラフトは言います。研究もそれを裏付けています。WeWork と brightspot strategy の行った調査によると、在宅勤務の従業員では、打ち合わせやブレインストーミングの機会が 11% 低下しています。コラボレーションが業務の核を占める従業員の場合、その減少率は 13~15% にもなります。
新しい未来のために、新しい働き方へ
さまざまな変化が生じる中で、WeWorkは、メンバーがそもそも最初に WeWork を選んでくれた原点を忘れないようにしています。センスのよいデザイン ( English )、コミュニティの強い絆、そしてこの新型コロナウイルスの問題を一丸となって乗り越えるべき課題として捉える起業精神です。
クラフトとスラトキーが毎朝出社する理由は、まさにそれなのです。
「メンバーエクスペリエンスに何よりも情熱を注いでいます」と言うクラフト。「毎日、WeWork のビルに足を踏み入れるすべての人に、一流のサービスを提供することを約束します。WeWork のあらゆる価値観は、私たちの日々の仕事に表れます。常に正しいことをし、より良くするために全力を注いでいます。」
クラフトとスラトキーは、今回の大規模な業務のまとめに差し掛かっています。すべての物品が納品され、設置も終わりました。それでも、クラフトは業者やオペレーションチームと毎週 2 回打ち合わせをし、すべてが順調であることを確認しています。今後は、メンバーたちが WeWork スペースに戻るにつれ、彼らからの問い合わせに応え、オフィスの密度を下げる ( English )のを手伝うことに業務をシフトしていく予定です。
新型コロナウイルスに関する新たな情報が発表されるたびに、WeWork ではシステムをアップグレードし、変更に対応するための調整を続けています。「システムやプロセスを構築したり改善したりすることと、それを維持することは、別のことです」とスラトキーは言います。「問題が修正され、解決策が確立されたら、利益を維持することが重要です。」
WeWork オフィスでは常に新鮮な外気を循環させていましたが、現在、世界的な設計およびエンジニアリング会社の Arup と協力して、空気ろ過システムのもたらす健康と安全性の向上 ( English )を図っています。感染拡大の初期の頃、疾病予防管理センターと地方自治体がどれほど急激にビジネスの要件を変更したかを踏まえ、スラトキーは Monday.com のボードという機能を用いて、州または地方レベルの行政命令の追跡を始めました。システムが無事に整った現在、フェイスカバーなど安全に関する決まりや手順について、地方および州レベルで新たな義務が課されたとしても、WeWork では迅速かつ効率的にそれらを実施することができます。
「明日もうまくいく。それは、私にとって、変化し続けることを意味します。明日を生き続けるために、私たちは常に確認し、調整しなくてはいけません」とクラフトは述べています。「WeWork には回復力があります。これこそが WeWork の基礎となるものです。私たちは学び、共に成長していくにつれ、そのことを実証し続けていきます。」
A.M. Higgins はワシントン D.C. 在住のライター兼コンテンツクリエイターです。