生産的なブレインストーミングができると、大きな充実感を味わえます。チームは、活気と達成感を感じ、次のステップに期待を膨らませながら部屋を出ます。これには、効果的なブレインストーミングの手法を知っていることが役立ちます。一方、ブレインストーミングがうまくいかないと、生産的でない、または繰り返しが多いと感じ、ネガティブな気持ちが満ちて、チーム全体が意気消沈してしまうかもしれません。
ブレインストーミングを頓挫させる要因はたくさんありますが、ブレインストーミングがうまくいかない一般的な理由をご紹介します。
- 発言者が偏っている。外向的な性格 ( English )の人や頭の回転の速い人が会話を支配し、他のチームメイトが発言する機会を与えられないい。
- アンカリング効果。参加者は最初に出されたいくつかのアイデアに捉われてしまうため、新しいアイデアが出にくくなり、先に進めなくなる。
- 気まずい沈黙。参加者が準備不足のため、1 時間にわたってつらい沈黙が続いたり、最悪の場合、会議が打ち切られたりして全員が惨めな気持ちになる。
- チームに一体感がない。コロナ禍のリモートワークでは、ブレーンストーミングはテレビ会議で行わなくてはならず、そのため、全員が一堂に会することで生まれる創造的なエネルギーが発揮されにくく、複数の人が同時に話し出してしまうという気まずさがある。
以下に紹介するブレーンストーミングの手法を導入すると、これらのよくある悩みが回避され、チームが団結して完璧なアイデアを生み出す ( English )ことができます。
10 の効果的なブレインストーミングの手法
ブレインストーミングは通常、「アイデアを出し合う」「議論や批評をする」「選択する」の 3 つのステップで構成されています。以下の戦略は、対面であろうとリモートであろうと、ブレインストーミングの 3 つのステージすべてにおいて役に立ちます。
1. ブレインライティング
これは非言語的なブレインストーミング法で、全員がブレインストーミングのテーマに関連するアイデアを 3 つ書き出します。4~6 分を目安に行いましょう。次に、全員が自分のアイデアを右側(または左側、どちらでもよい)の人に渡し、その人は受け取ったアイデアを基に、箇条書きにした要点やクリエイティブな戦略 ( English )を追加します。参加者が離れた場所にいる場合は、Slack のようなコミュニケーションプラットフォームを使って、アイデアを共有します。数分経ったら全員が再びメモを隣の人に渡し、テーブルを一周するまで続けます。全員のアイデアが一周したら、グループで話し合い、どのアイデアを深めていくかを決めます。
この手法では、ブレインストーミングの最大の落とし穴である「発言者の偏り」と「アンカリング効果」を軽減することができます。参加者全員が貢献でき、最初に出されたアイデアに捉われることがなくなります。
2. ラピッド・アイディエーション
アイデアを議論、批評、肉付けする前に、決められた時間内にできるだけ多くのアイデアを書き出します。この手法では、時間的な制約を設け、それを厳守します。そうでないと、緊急性の感覚が損なわれる恐れがあります。
このブレインストーミングは、アイデアを成長、転換、発展させる前にアイデア自体が打ち砕かれてしまうという、よくあるシナリオを避けるために有効な手段です。アイデアの批評を始める前に、全員が自分のアイデアを書き留めることで、アイデアが早い段階で必然的に撃墜されてしまうのを避けることができます。また、ブレインストーミングのよくある失敗例として、グループで共有する前に、自分のアイデアを出し尽くしてしまうということがありますが、時間の制約があることで、それを防ぐこともできます。
3. 人物ストーミング
これは、その場にいない有名な人物(上司、架空の人物、または著名な公人など)を選び、その人ならこの問題にどう取り組むか、またはこのアイデアについてどう考えるかを議論します ( English )。たとえば、オプラ・ウィンフリーならこの問題にどうアプローチするだろうか、と考えてみます。くだらない、と思われるかもしれませんが、他人の立場に立って考えてみることで、普段とは違う方法で問題に取り組むことができます。
ブレインストーミングでは、チームメイトが自分のクリエイティブなアイデアを出すのをためらうことがありますが、オプラのような、誰か別の名前で発表すれば、アイデアを共有してくれる可能性が高まります。また、この方法では、予算や時間といった、通常クリエイティブな思考を制限する障壁を取り除くことができます。
4. 直観像メソッド
この視覚化ベースの手法 ( English )は、著述家であり心理学者でもある Jacqueline Sussman 氏が推奨しているもので、これまでの人生経験の中で心に残る鮮明なイメージを用います。まず、意図を設定します。たとえば、革新的なスマートフォンを作るなど、目を閉じて、何を創造するのかを明確に設定します。グループの全員が、「今までの携帯電話とはまったく違う斬新なデザインを考えよう」と心に決めます。
こうして意図が設定されたら、再び全員が目を閉じ、自社の現在の携帯電話のデザインを思い浮かべ、最初に浮かんだ直観像を引き出します。全員がそのイメージを頭に浮かべたら、そのデザインをもとに全員で作り始めます。現在のデザインについて、好きな色や理想的なサイズをグループでイメージしましょう。今のデザインに元々搭載されていてほしかったと思う機能も追加します。もしかしたら、より高性能のカメラやもっと大きな画面などが挙がるかもしれません。全員が自分の頭の中で「理想的な携帯電話のデザイン ( English )」のイメージにたどり着いたら、ランダムに参加者を差し、自分が強化したバージョンがどのようなものかを正確に共有してもらいます。共有が済んだら、そのアイデアを記録します。その新しいバージョンの携帯電話を全員にイメージしてもらい、その上にアイデアを重ねていきます。最終的に、色や機能からサイズまで、具体的なアイデアが何百と出てきます。
この方法は、何かを再発明するのではなく、むしろ今あるものを強化したい場合に有効です。コストにこだわる必要はありませんが、関係してくる可能性があるものとして頭にとどめておくことが大切です。
5. オンライン・ブレインストーミング(通称ブレインネッティング)
この手法に必要なのは、チームメンバーのアイデアをまとめて書き留められる場所だけです。従業員全員が同じタイムゾーンにいる場合は、Slack ( English ) を利用してリアルタイムでブレインストーミングを行うと、一緒にアイデアを練ることができます。チームが分散している ( English )場合は、多忙なスケジュールや時差を考慮して、ひらめいたときにいつでもアイデアを書き留められるように、Google ドキュメントを利用するといいでしょう。メンバー全員が同じ都市にいる場合は、WeWork On Demand ( English ) や WeWork All Access を活用して会議室や共有スペースを予約し、対面でブレインストーミングを行うことも 1 つの方法です。
全員がアイデアを書き出したら、どのアイデアを深めていくかを決めるフォローアップが重要となります。この手法はアイデアを出し合うのには最適ですが、批評したり計画を策定または実行したりするには、別途会議を設ける必要があります。
この手法の利点は、離れた場所にいる従業員も参加でき ( English )、チーム全員が意思の疎通を図れる点です。また、メンバーがより自由に発言できるのであれば、全員の匿名にしておくことも可能です。
6. ラウンドロビン・ブレインストーミング
これは、全員参加型の手法で、各自がアイデアを 1 つ ( English )出し合います。第一のルールは、全員が必ず 1 つ目のアイデアを出してから、2 つ目のアイデアを提供したり、出ているアイデアを批評、詳しく説明、または議論したりする、というものです。第二のルールは、「私のアイデアはすでに他の人に言われてしまった」と言ってはいけない、というものです。一周が終わって、もっと考える時間ができたときに、その人に戻ればいいのです。また、ブレインストーミングに先立ちアイデアを考えておいてもらうのもいいでしょう。
ラピッド・アイディエーションと同様、この手法では全員参加を促し(つまり、参加が必須)、批評の段階に移る前にチームメンバーがすべてのアイデアを出し切れるようにします。
7. ステップラダー手法
この手法は少々ややこしいのですが、最初に出されたアイデアや、最も声の大きい人の発言に影響されないようにするには素晴らしい方法です。
まずファシリテーターがブレインストーミングのテーマを紹介し、その後 2 人を残して全員が部屋を出ます。リモートワークのメンバーがいる場合は、テレビ会議アプリのブレイクアウトルームを利用すると、よりスムーズに進行できます。部屋に残された 2 人は数分間ブレインストーミングを行い、その後、3 人目が部屋に入ってきます。3 人目は、最初の 2 人が討議したアイデアについて議論する前に、自分のアイデアの一部を共有します。その後、1 人ずつ部屋に戻り、自分のアイデアを共有してから、議論中のアイデアについて説明を受けます。部屋の外では、待っているチームメンバーがブレインストーミングを続けてアイデアを書き留めても、各自の業務に戻っても構いませんが、部屋の中に入るまでは、誰にもアイデアを話してはいけません。
この手法は時間がかかるので、チームの人数が多い場合は、もう少しシンプルな手法の方がいいでしょう。
8. マインドマップ
グループで最初に共有されたアイデアが必ずしもベストなものでなくても、それがきっかけで 3 つのより優れたアイデアが生まれることもあります。この手法では、まず 1 つのアイデアを取り上げ、そのアイデアとその下に位置するサブアイデアを線でつないでいきます。マインドマップは視覚的にブレインストーミングに取り組むことができ、物事を視覚的に考える人にとって効果的です ( English )。
9. スターバースト
これはブレインストーミングの終盤の段階で用いる手法で、すでにグループ内でアイデアが選択され、それを肉付けし、実行に移す可能性のある場合に実施します。
チームはまず 1 つのアイデアまたは課題を中心にして、その周囲に 6 つの点を書き、星のかたちを作ります。各点は、「誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように」という問いを表します。たとえば、この製品のターゲットは誰か、発売のタイミングはいつか、この製品を作った動機は何か、といった具合です。
この手法では、答えよりも問いに焦点を当てるため、グループであらゆる角度からアイデアを検討することができます。このようにアイデアを提示することで、アイデアを出した人が自分の考えを擁護したり、自分で実行方法を考えたりする必要がなくなります。その代わり、チーム全体で解決策を考えます ( English )。
10. 場面を変える
チーム全員が同じ空間にいる場合は、カジュアルなランチが取れる場所や別のフロアに移動することで、新しいアイデアが生まれやすくなります。物理的なスペースは、従業員の働き方、考え方、感じ方に大きな影響を与えます。常に同じ部屋で、同じメンバーでブレインストーミングを行っていると、繰り返しのように感じ、インスピレーションが浮かばなくなるかもしれません。短時間であっても、まったく違う空間がもたらす気分転換は、人の思考を変え、新しいアイデアを生み出すのに役立ちます。
効果的なブレインストーミングセッションを行うための 5 つのヒント
どの手法を用いるにしても、以下に挙げるヒントは、ブレインストーミングの効果を最大限に高める ( English )ために役立ちます。
- 準備する。クリエイティブなアイデアは、急に浮かぶものではありません。準備時間も考慮に入れしましょう。チームが自発的にアイデアを出せるように、解決すべき課題やトピックをできるだけ早い段階でチームにメールで知らせるようにしてください。ブレインストーミングの前日、または 2 日前、あるいは 10 分前では、クリエイティブなアイデアを出し合うのに十分な時間とは言えません。
- 意図を明確にする。「必ず今月中に実現させる」ための実行可能性の高いアイデアを求めていますか。それとも、「これまでにない新しい」アイデアを求めていますか。会議が始まる前に、期待する成果を明確に伝えておきましょう。
- 違うメンバーに声をかける。毎週、毎月、同じメンバーでブレインストーミングを行っていると、アイデアがマンネリ化し、毎回同じアイデアに収束してしまう恐れがあります。新鮮な視点を取り入れると、物事は変わります。異なるバックグラウンドを持つ人や別のチームの人を招いてみましょう。
- 包括的で協力的な環境を醸成する。「悪いアイデアなんてない」というフレーズは、ブレインストーミングの決まり文句になっていますが、誰でも自分のアイデアが即座に否定されると、次のアイデアを出す自信がなくなります。
- フォローする。ブレインストーミングは、新しいアイデアやソリューション、製品などを生み出すためのものだと認識し、そのアイデアを実現するにはフォローアップが必要であることを認識しましょう。アイデアを絞り込むための十分な時間を確保し、構造的にいくつかのアイデアを追求してみてください。
ブレインストーミングのメリット
従来、ブレインストーミングは新しいアイデアを生み出し、コンセプト化するために行われてきましたが、適切に行われれば、メリットはそれだけにとどまりません。
- グループの士気を高める
グループでブレインストーミングを行うと、チームの士気が高まります ( English )。なぜなら、クリエイティブかつ協力的な環境の中で、共通の目標に向かってチームが動くからです。チームメイトが顔を突き合わせることができ、そのことはチームの絆を深めるために重要な役割を果たします。この効果を最大限に高めるには、初期のアイデア出しの段階で批判的意見を控えることが重要です。
- クリエイティブな思考を促進する
私たちは、息つく暇もなく次から次へと仕事をこなしがちですが、クリエイティブな分野でもそれがあてはまります。邪魔されることなく、自由にアイデアを出せる時間を特別に設けることが重要で、そうするとクリエイティブな思考力 ( English )が鍛えられます。また、共通の話題やアイデアのもとに人を集めると、従業員の孤立感が軽減 ( English )され、実際に従業員の生産性も向上します。
従来型の会議では、参加者は準備万端の状態で、質問に対する答えを用意していることが期待されます。ブレインストーミングでは、そのようなプレッシャーを取り除き、たとえアイデアが十分に練られていなくても、完璧なソリューションでなくても、参加者は未完のままのアイデアを共有できます。それらのアイデアは、その場にいる別の参加者が新しいアイデアを思いつくきっかけとなり、どんどんとアイデアが積み重なっていきます(「8. マインドマップ」を参照)。
- 多様なアイデアが結集される
全体は部分の総和に勝ります。ブレインストーミングは、一人で行うよりもグループで行う方が良い結果をもたらします。なぜなら、誰にでも他人にはない強みと視点 ( English )があるからです。
- 数多くのアイデアを生み出す
グループでブレインストーミングを行った場合、そこで生まれるアイデアの数の多さがその有効性を強く物語っています。すべてのアイデアが採用されるわけではなく、チーム内で出されたアイデアの中で追求する価値のあるものは一握りでしょう。だからこそ、ブレインストーミングが終わった後に、それらのアイデアを実現させるための企画セッションを行うことが重要となります。
これらのブレインストーミングの手法は、ブレインストーミングセッションを最大限の効率で行うのに役立ちます。また、クリエイティブなエネルギーをさらに高めたい場合は、クリエイティブ性に関する名言 ( English )をチェックして、あなた自身やチームの活性化に役立ててください。
この記事は 2019 年 10 月 16 日に掲載されたもので、編集担当によって全体的に更新されました。
Jenna Wilson は、WeWork のソーシャルメディアチームのシニアアソシエイトで、Ideas by WeWork ( English ) のライターも兼ねています。インパクト、サステナビリティ、そして世界の WeWork の従業員などを主に扱っています。